アスベストの健康被害
アスベストは、天然の鉱物で石綿とも呼ばれています。
アスベストは繊維が極めて細いため、建築物に使用する際などに研磨機、切断機などを通すと飛散しやすい特徴を持っています。
また、使用している建築物が経年劣化した場合、吹付け石綿などが露出、アスベストが飛散して人が吸入してしまうおそれがあります。1975年に建築物へのアスベスト利用は原則禁止とされましたが、それまでに建てられた多くの建物には、アスベストが使用されている可能性があります。
建物への使用禁止後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
石綿(アスベスト)肺
アスベストは、それ自体に化学的な有毒性があるわけではありません。その繊維のあまりの細さ、軽さが問題で、人間が吸引した場合、肺に刺さるなどダメージを受けます。
その一例が石綿(アスベスト)肺、肺が線維化してしまう肺線維症の一種です。アスベスト以外の細かな粉じん、薬物等でも同様の症例が見られますが、アスベストが原因で発症した肺線維症は、石綿肺と呼ばれ、他の肺線維症と区別されています。
建物の建築に携わった労働者など、長期間、大量の石綿を吸引し続ける可能性が高い人に起こりやすいと言われています。
アスベスト被害の特徴として、その被害が現れるまでの潜伏期間が非常に長い点が上げられます。アスベストをばく露して10年から20年経ってからでも、石綿肺になる可能性があるのです。
アスベストで肺がん・悪性中皮腫
WHO(世界保健機関)では、アスベストが肺がん、悪性中皮腫の原因になると報告しています。
肺がんに関しては、アスベストが人体に対しどのように作用しているのかは解明されていません。しかしながら、アスベストを多くばく露した人ほど肺がんになる可能性が高く、相関関係が指摘されています。
肺がんに関しても潜伏期間が長く、およそ15年~40年と言われています。
悪性中皮腫とは肺をとりまく胸膜や肝臓、胃を囲んでいる腹膜、心臓とその周辺を覆う心膜などに悪性の腫瘍ができる病気です。
若年層でアスベストをばく露した場合、悪性中皮腫になる可能性が高くなることが知られています。潜伏期間はおよそ20年~50年と言われています。
アスベストでの病気発症率
アスベストをどの程度吸えば病気が発生するのか、それを予測することは非常に困難です。ただし、全体を統計的に見ると、吸引量と発症数は相関関係にあることが分かっています。つまり大量にアスベストを吸引した方が危険性は高いということです。
病気によっても多少の差異があります。例えば悪性中皮腫は肺がんと比べわずかの吸引で発症すると言われています。
ただし、アスベストを吸引したから必ず何かしらの病気が発症するわけではありません。大量に吸引した方でも病気にならない場合がある一方、わずかの吸引でも発症することがあります。